例文(1)の場合、「泊まった」のほうが日本語として普通なのだが、外国人は「泊まっていた」を使う誤用傾向がある。寺村のこの例文の作者の考えによれば、「泊まった」というのは7,8時間の長さを持つ時間内に継続したことだから、~テイルという継続のかたちの過去形を使ったのだという。しかし、「泊まった」と言おうと、「泊まっていた」と言おうと、客観的事実としては同じく7,8時間継続したのである。工藤は、これをアスペクトが話者の<視点・とらえかた>の違いを反映する文法的カテゴリーであり、客観的事実としては同じであっても、継続性を無視して点的・時間的に限界づけられてとらえればスル(シタ)で、時間的に限界づけられないで継続的にとらえればシテイル(シテイタ)で解釈できると説明している。
 また、このようなとらえかたの相違がどこから出てくるのかという疑問に、工藤は、テクストの結束性、つまり<タクシス>があるからだと解説している。タクシスは、テクスト<複数の文の有機的つながり>において、複数の出来事間の時間関係を表すカテゴリーである。時間の流れで、次々と起こってくる出来事の連鎖の中に、1つの出来事を配置するとすれば、その出来事(=運動)はどんなに短時間のものであっても、継続的にとらえられ、スルではなくシテイルを使う。つまり、日本語の場合、テクストにおいて、完成相スル(シタ)のアスペクトが、出来事間の時間関係――<継起>、継続相シテイル(シテイタ)のアスペクトが、<同時>を示す機能を持っていると主張している。前の例(1)(2)もこの原理が貫かれるゆえ、スルとシテイルの使い分けが起こったのである。
 しかし、次の誤用例を見てみよう。
(3)    どこに(*行った)のよ。3回も電話したのに。       (ただいま浪人) 
(4)    A:きっと、あなたは、ぼくの気持ちを(*誤解した)のよ。
B:おれは誤解なんかしていないね。                 (雷雨)
(5)    「そろそろ東京に向かった方がいいんじゃねえか」史郎は腕時計を示した。九時を(*回った)。「そうだな」謙次がハンドルを切った。史郎は自分の腕時計を(*見た)。父親から二十歳の誕生日にもらったものだ。          (熱風)
 これは10名の日本語中上級の中国語話者を対象に行ったアンケート調査(すべての問題は、日本語の小説と中国語の小説の日本語訳から抜き出した文により作られたもの。与えられた文脈に合わせ、動詞形式「スル・シタ/シテイル・シテイタ」を選ばせる質問設定)の結果の一部で、誤用率が100%に近い誤用例なのである。中国語話者がこのようにスル(シタ)とシテイル(シテイタ)を使い間違えるのは、中国語の「着・了」が<出来事間の時間関係を示す>というテクスト的機能(完成相=継起、継続相=同時)を持っていないからだと思われる。
 そこで、本稿では、先行研究を踏まえながら、中国語のアスペクト表現のテクスト的機能の有無を探求してみたいと思う。具体的には、中国語の現代小説『上海宝貝』と、その日本語訳を対照しながら、テクストにおいて、同時・継起関係を示す中国語のアスペクト表現を分類し、日本語の「スル」「シテイル」に代表される完成相、継続相との関係を明らかにしていく。
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